ひばりっこブログ

新学習指導要領とICT

 佐藤天彦さんという方をご存じでしょうか。趣味はファッションとクラシックと公言されています。2回の防衛を果たし,現在の名人位についている将棋の棋士です。将棋もさることながら,着物や服の着こなしがおしゃれだとメディアに取り上げられることがよくあります。昨年5月,この佐藤名人の将棋についてのニュースが報じられました。Ponanzaというソフトウェアに2連敗したのです。「電王戦」というタイトル戦はソフトウェアの勝ちという結果で幕を閉じたのです。

 将棋の世界でもこういった具合ですから,ICT技術は社会のさまざまな場面に取り入れられています。子どもたちの学びの場である学校においても必要不可欠なものであるとして,新学習指導要領に取り入れられることになりました。

 本年4月より,新学習指導要領の先行実施期間に入り,2020年からの本格実施に向けた準備や先んじて取り組むことができる学習内容の導入が始まりました。

 文部科学省が,指導要領改訂の中核に据えている考え方は3点です。①子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成する。②知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成する。③先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心や健やかな体を育成する。これらの実現のために,各教科においてICTを活用すること,ならびに論理的思考力を育成するためにプログラミング教育を行うことが盛り込まれました。

 本校においても,保護者の皆様のご協力によって,ICTを活用した授業環境整備が行われており,たいへんありがたく思っております。4年生では,1人1台のタブレット導入し,教科学習で活用を始めています。放課後には,プログラミングラボ「HiRo2Ba」において課外講座が行われるようになりました。ところで,なぜ小学生がICTの活用を学ぶことが必要となってきたのでしょう。

 これまでの学習指導要領から教育方法の転換を図る必要があるといわれるきっかけとなったのは,OECD生徒の学習到達度調査,いわゆるPISA調査の結果です。2003年度に実施された調査において,国際的に学力を比較すると順位が大きく低下したと大々的に報道されました。「ゆとり教育」が元凶ではないかとの論調が取り上げられ,平成20年の指導要領改訂では,「ゆとり」から「バランス」へと転換が図られました。

 2015年のPISA調査では,科学的リテラシーの平均得点がシンガポールに次いで2位,数学的リテラシーで5位と順位を戻してきたことがまとめられています。

 その一方で,読解力は8位にとどまりました。これに対して文部科学省は「読解力の向上に向けた対応策について」というドキュメントをまとめ,日本の生徒は「コンピュータ上の複数の画面から情報を取り出して整理し、それぞれの関係を考察しながら解答することができていない。」という課題があるとしました。
 コンピューターが使えるから学力が上がるわけではなく,コンピューターが使えないことによって「答える力」を持っているのに答えられない。つまり,コンピューターは使えて当たり前で,使えないとマイナスに働くということを示しているわけです。
 課題を解決するために必要な情報の収集・整理・活用能力の育成,情報モラルを含む基礎的なITスキルの習得,プログラミング教育を通じて論理的に物事を考える力の育成,これを,小・中・高と段階に応じて行っていきましょうということで,小学生がICTの活用を学ぶこととなったのです。
 2020年に向け,教育内容についても検討が重ねられています。本校教職員の腕の見せ所です。そう,明日は,メディア教育部によるプログラミングの研究授業です。