ひばりっこブログ

「自ら考える力を育てる」~ 質の高い考えを引き出す授業 (2年次)~

研究部主任 神吉 清視

 4年生の国語の教材に,『ごんぎつね』があります。主人公のきつねのごんは,自分と同じ一人ぼっちの境遇となった兵十に,毎日,栗やマツタケ,魚などを届けます。しかし,ごんを「いたずらぎつね」と思い込んでいる兵十は,ごんを銃で撃ってしまいます。ごんが息を引きとる直前に,兵十は,ごんが自分のために食べ物を届けてくれていたことを知ります。たいへん哀しい結末の物語ですが,それだけに子どもの心に響くものは大きいようです。
 「ごんは,最期になんと言ったのでしょう」と問いかけると,「ぼくを撃つなんてひどいよ」,「本当は兵十と仲良くなりたかったんだ」,「もう,会えないんだね…」と,たくさんの言葉が返ってきます。そのような中,以前に4年生を担任したときに,「ぼくは,うれしいよ」と答えた子がいました。理由を尋ねると,「初めて,兵十が本当の自分を分かってくれたから」ということでした。
 この発表をきっかけに,周りの子どもからたくさんの意見が出てきました。「死んでいくのに,うれしいなんて…」「でもね,ごんが一番望んでいたのは…」「でも,死んでしまったら…」「前の場面でね,ごんがこんなことを言ってるよ…」と,どの子も自分の考えを,自分の言葉で,その理由と一緒に伝えようとしていました。
 このように,一人の考えをきっかけに,子どもたちが考えを深め合う時間が生まれることは,よくあります。特に国語の場合,登場人物の心情の解釈は,人それぞれ違います。いろいろな解釈があることを知り,それを元に自分の考えをさらに膨らませたり,逆に考え直したりすることが大切なのです。そこに,学級という集団の中で「考える」意味が生まれます。

 昨年度から標記の研究目標のもと,日々の授業を計画しています。昨年度は,「どの場面で考える機会を設けることができるか」と,「初めに考えること在りき」という感があったことは,否めません。今年度は,「質の高い考え」に焦点を当てようと考えています。
 クラス全体で活発に意見を交換し,考える活動に取り組んでいるようでも,それが考える意味のあることなのか,学年に応じたことを考えさせようとしているのか,授業前に検討しなければいけませんし,一人で考えるのか,複数の友だちと一緒に考えるのか,複数であるならどの人数が適当であるのかということも,活動を活性化させるには重要な点です。また,同じ内容の授業であっても,複数のクラスで同じ授業を行う場合は,それぞれの学級の児童の様子,興味の持ち方により,進め方を変えていくことも必要です。高学年の授業は専科制を採用しているので,その必要性は大きいでしょう。
 考える内容や方法を重点的に見つめ直していく2年次となるよう,教員全員で考えていきます。