ひばりっこブログ

学びに向かう力をつけるために

「子どもは,どの子もみなのびたいと思っている。」
 子どもとの関わりの中で,学生時代に聞いたこの言葉は,いつも私の心の中にあります。小さく描いた絵の中にもその子の思いが詰まった良い絵があります。自分を高めたい,良くしたいという子どもの願いを忘れずに,また,今の時期でしか表現できない子どもの良さを大切に,のびやかで素直な子どもを育てたいと思っています。
 低学年の授業では,子どもが工夫しやすく,あとで遊べるもの,造形遊びの要素を含んだものを多く教材に取り入れています。そうすることで子どもの苦手意識をなくし,活発に授業に参加できるようになることがねらいです。すべての子どもにとって楽しいというのは難しいのですが,「面白そうだな」「きれいだな」の気持ちを刺激して,できるだけ手を動かし,子どもたちが自身で活動できるように心がけた指導を行っています。1学期には,2年生で「ストローでこんにちは」の工作をしました。ストローと箱で動く仕組みを作り,折り紙などで飾りを作るというものです。まず,はじめに全員で一緒に仕組みの部分を作りました。図工が苦手な子どもに合わせ,ゆっくりと制作を進めたので,苦戦する子どもも友だちの協力を得て,何とか基本の形を作ることができました。その後,作った基本形をピョコピョコと動かしながらイメージを広げ,自由に飾りを作っていきました。ザリガニやカブトムシ,クラゲ,アロワナ,警察官,ロケット,鳥,バレリーナなど,実に様々なアイデアで作品が完成し,子どもどうしで見せ合う姿が見られました。特別なものではなく,身近にある道具や材料を使うことで,子どもたちにも扱いやすく,自分が作りたいものが作りたいように作れ,楽しむことができていたようです。「先生,見て。こんなの作ったよ。」「ここも動くようにしてみたよ。」「この作品はこっちから見るんだよ。」うれしそうに見せに来る子どもの満足そうな顔に私自身もうれしさを感じることができました。
 8月に全国教員研修会がありました。教科ごとに,日頃の授業実践や研究の成果を発表し,互いに学び合うための研修会です。他校の先生方のお話を聞くことで自らの指導のあり方を見つめ直す良い機会でもあります。その中で新学習指導要領についての講演がありました。内容は,現在の教育で求められているのは,10年後20年後を見据えた教育で,図画工作科で育成する資質や能力は,知識・技能に加えて思考力・判断力・表現力,学びに向かう力・人間性などであると教えていただきました。図工というと以前は,絵を描く,工作を作る,の技能面ばかりが重視されていました。それが,時代の流れとともに変わってきているということです。ふと,2年生の子どもたちの顔が浮かびました。はたして,今,教えている子どもたちは,10年後20年後にどうなっているんだろう。元気に過ごせているか,しっかりと勉強しているか,社会に出て活躍しているのか,そんなことを考えると同時に,今,私が良かれと思って指導していることが本当に正しいのだろうかと自分に問いかけていました。子どもたちを取り巻く環境が大きく変化している中,未来を生きるための力をつけてやるのが私たちの役目だと考えます。その役目をはたすために,これからできること,子どもたちとどう接すればよいのか,どういったアプローチができるのかを考えていきたいと思います。