心まにまに
2021/08/03
せんだいに、水やっといて
小学生の頃の夏休み、夕方になると祖母から
「せんだいに、水、やっといて。」
と、よく頼まれました。
「せんだい」って、何のことか分かりますか?
もともとは「せんざい」が正しいのですが、
「洗剤」ではありません。
漢字で書くと、「前栽」。
家の玄関前の、ちょっとした植え込みのことです。
祖母のようなお年寄りは、前栽のことを
「せんだい」と発音していたのです。
そこに水をやることが、私の夏休み中の仕事でした。
とはいえ、そんなに大きな前栽ではないので、
ホースで水をやれば、あっという間に終わってしまいます。
たっぷりと水をやったあと、
ホースを持って門から外に出て水をまきます。
先ずは自分の家の前、続いて向かいの家の前、
さらにはお隣の家の前…と、
アスファルトを黒く濡らしていくことを楽しみました。
そこに風が吹くと少し冷えた空気を感じて、
とても気持ちがよいのです。
さらに、お向かいのおばさんが玄関から顔を出して、
「水まきしてくれてんのん、ありがとうさん。」
と声をかけてくれるのも嬉しいものです。
今は、たまに実家に帰ると、
父が前栽に水をやる場面に出くわします。
子どもの頃に小さいと感じた前栽は、
大人になるとさらに小さく感じます(笑)。
最近、家の前に水まきをするおうちって
あまり見かけませんね。
夏の夕方の水やり、水まき、
けっこう良いものなんですけどね。