ひばりっこブログ

「真の国際人」を目指して

「真の国際人を育てる。」「世界で通用する人材を育てる。」
昨今,よく見聞きするフレーズです。みなさんは,これらからどんなことを想像しますか?多くの方が,「英語を流暢に話すこと。」を想像されるのではないでしょうか?もちろん,これからの時代,英語が流暢に話せるに越したことはありません。英語が話せたら,さまざまな国の方と自由に意思疎通ができ,世界が広がるのは確かですから。しかし,私は,英語を習得する以前に身につけるべき大切なことがあると思っています。
 夏休み後半,8月16日~24日までの9日間,ニュージーランドで本校開校以来,初めての海外研修を行いました。本校は大規模校にしては珍しく,1人でホームステイをします。つまり,ホームステイ先では,日本語の通じる相手はいません。そういった環境の中,最初は,言葉の壁や文化の違いへの戸惑いから,心細さを感じることもあったでしょう。初日に目を腫らして登校してきた児童を見ると,「ああ,一晩中泣いていたな。」と想像がつき,胸が詰まる想いでいっぱいになりましたが,あえて声かけはせず,見守ることにしました。私は,その児童が翌朝発した言葉が忘れられません。「先生,今日はね,お弁当いらないでしょ?でも,ホストマザーが作ろうとしていたから,今日はいらないって言ったら伝わったよ!一歩前に進めたかな?あと,ホストシスターとすごく気が合うの!」まさに,彼女が自力で世界への扉を開けた瞬間でした。彼女は,自分の殻を破り,一歩を踏み出す勇気を学んだことでしょう。
  現地の小学校では,午前中はESOLという英語授業,午後からは,現地の正課の授業を受けました。特に,ESOLでは,3つの言葉を何度も練習しました。相手に何かを頼むときは”Please”,何かをしてもらった時は”Thank you.”,人とぶつかったりして謝るときは
 ”Sorry.”。この3つの言葉をきちんと使えると,周りから笑顔をもらえたり,親切にしてもらったりし,まさに魔法の言葉となります。知っていることと実際に必要な場面で使えることとは違うので,英語のレベルに関係なくあらゆる場面を想定して毎日練習しました。
 みなさんは,何かをしてほしいのに「お願いします。」が言えない人,何かをしてもらったのに「ありがとう。」が言えない人,ぶつかっても「ごめんなさい。」が言えない人と仲良くしたい,積極的に関わりたいと思えますか?また,英語が流暢でもそのような人を「国際人」だと言えるでしょうか?
  たとえ,英語が完璧でなくとも,これらの3つの言葉が積極的に使えるようになると,自然と周りに友達が集まってきます。誰もが,
この子のことをもっと知りたい,助けてあげたい,と寄ってきて,あらゆる手を尽くし,伝えようとしてくれます。大事なのは,言葉よりも,「相手を思う気持ち」なのです。そのことに気づいた子どもたちは,間違いを恐れることなく,どんどん自分から英語で話していくようになりました。
 ある朝,ホストファミリーの車から降りてきた児童が,振り返ってもう一度車のドアを開け,”Thank you for driving me.”と伝えており,大きな成長を感じました。そのうち,子どもたちの中から「帰りたくない。」という声が聞こえるようになりました。相手のことを思ったり,親切にしてもらったりする経験を通して,もっと相手と関わりたい,伝えたいという気持ちが芽生えてきたのです。
 英語を流暢に話すことに憧れる人は多いと思います。でも,もっと大事なのは,「相手を思う気持ち」と,一歩踏み出してそれを「伝えようとする勇気」です。完璧でなくてもいいのです。間違ってもいいのです。この2つさえ身についていたら,英語はいくらでも上達するのですから。
 雲雀丘学園小学校の英語教育では,この2つを大事に,ただ英語が話せるだけでなく,子どもたちが将来出逢った人から,「友達になりたい。」「この人と一緒に働きたい。」そう思ってもらえる人材の育成を目指したいと考えます。